院生と物理学と+α

大学院生(専攻は相対論と量子情報)が学んだこととかつらつら書いていきます

重力波の今後(&時空の対称性)

久々の更新です。
2回目にしてもう更新する気力が無くなってましたが時間が少しできたので



今更ですが重力波ノーベル賞をとりましたね。
受賞者の1人、Kip S.Thorneは通称"電話帳"として知られる重力理論の有名な教科書、「Gravitation」の著者でもあります。
※電話帳といわれる所以はめちゃくちゃ分厚い本だからです。
こんなやつ↓
Amazon CAPTCHA
僕も日本語版を持ってますが、まあ持ち歩きたくはないですね・・・ずっと研究室の本棚に置いてます。


さて、そのノーベル賞を受賞した重力波ですが、最初に観測されたのはブラックホールの合体により発生したもので、つい先日観測されたものは中性子星の合体によるものでした。
現在は地上でのレーザー干渉計による測定が行われていて、干渉計の長さはLIGOで4kmとなっています。
ざっくりいうと、この干渉計の長さが長ければ長い程、波長の長い重力波が観測できます。
昔に発生した重力波赤方偏移で波長が伸びているので、ビッグバンぐらいの頃の情報を得ようとすると波長がとんでもなく長い重力波を観測する必要があります。
これは4kmそこらではダメなのですが、地上では地殻の振動の他、地球自身の曲率もあるのでこれ以上長くできません。
そこで考えられているのが、宇宙に衛生を打ち上げ、レーザー干渉計の長さを長くして測定しようという計画です。
そのひとつにLISA計画というものがあり、3つの衛星を打ち上げ、トライアングル状のレーザー干渉計をつくり測定をするというものです。
これに関してはLISAのHPの公式動画の紹介が素晴らしいので是非それを見てみてください。
www.youtube.com

まるでSF映画の紹介みたいですよね…
この計画でのレーザー干渉計の長さは公式発表だと500万kmで、文字通り桁違いの長さです。
これならきっと今まで見れなかった初期宇宙の重力波も見れるはず!!


なんですが・・・この計画は元々NASAESAの共同プロジェクトだったのにNASAが撤退したために残念ながら打ち上げは2034年とだいぶ先に延期されてしまったようです。
試作機の打ち上げは2015年に成功しているようなので、あと20年弱辛抱強く待ちましょう・・・


閑話休題

前回特異点定理の話をして、その条件について次回書くと言ったんですが、やはりいきなり特異点定理の話を詰めていくのは急ぎ過ぎだと思い、その前段階としてブラックホールの話から進めていくことにします。

で、そのブラックホールの話に入る前のさらなる前段階として、時空の対称性とは何か?について知っておくと面白いです。
なので、時空対称性の数学的な扱いを纏めました。
多様体と、群論の知識が多少あれば、学部4年生でも読めると思います。
ただしかなり数学的(物理屋からみると)なので、その辺りに初めて触れるという人にはわけわからない・・・という感じかもしれません、すいません・・・
もともとゼミ用にまとめたものだったのでかなりお堅い感じになってますがご了承ください。
まだ実は途中だったりするので、こそこそ更新していくと思います。
(PDFになってるのでそこは注意を)
Dropbox - 時空対称性.pdf

時空の対称性が定義されると、そこから計量にいろいろな制限が課せられて、アインシュタイン方程式が解きやすくなります。
例えば有名なシュワルツシルト解は、時空が静的かつ球対称という制限を課して、アインシュタイン方程式を解いたときに出てくる解です。
ではまずその"静的"や"球対称"とはなんなのか?を数学的に定義する必要があります。(静的については今回は書いてませんがいずれ)

一般相対論を少し勉強したことがあるという人でも、このあたりの数学的な扱いは学部の講義等では扱わない(ことが多いのでは?)と思うので、ちゃんと知りたい!と言う人の役に立てばいいな・・・というのは建前で自分で纏めたことをどっかに残しておきたいだけです笑