院生と物理学と+α

大学院生(専攻は相対論と量子情報)が学んだこととかつらつら書いていきます

相対論を学ぶ為の教科書参考書

相対論を学ぶのにどんな本を読んだらいいか?

と訊かれたので、それについてちょっとまとめようと思います。


結論から言いますが、そんなの知りません。

何故なら僕は相対論を完全にマスターしたわけでもその道の一流の研究者でもないからです。


ですので、僕が辿った道のりを紹介しようと思います。

まずは相対論入門としてド定番なシュッツです。

確か学部3年の時に読み始めたと思います。

第2版 シュッツ 相対論入門 ? 特殊相対論

第2版 シュッツ 相対論入門 ? 特殊相対論

第2版 シュッツ 相対論入門 ? 一般相対論

第2版 シュッツ 相対論入門 ? 一般相対論

特殊相対論から丁寧に解説してくれるので、初学者にはうってつけだと思います。一般相対論に最低限必要な数学もちゃんと直観的に解りやすく導入されています。

そのあとはこれもまた有名な内山さんの一般相対論を読み始めました。

一般相対性理論 (物理学選書 15)

一般相対性理論 (物理学選書 15)

・・・正直に言いますが僕はこの本読みにくくてあまり真剣に取り組みませんでした。

内容は素晴らしいと思います。(変分原理、Kerr解の導出、Spinor等がしっかり載ってる)

ただ単純に文字が小さい(笑)、古い本なのでローテーションも違ったりする・・・とかなんとか自分なりのいちゃもんをつけて、自分の知りたいところだけを必死に読みました。

次によく相対論の研究者なら必読と言われるほどの名著WaldのGeneral Relativityを読み始めました。

General Relativity

General Relativity

これは本当にすごい本だと思います。特殊相対論はある程度知っていること前提ですが、必要な数学が最初の方と巻末にまとめてあり、前半は一般相対論の基礎、後半はかなり深い内容までしっかり書いてあります。

Causal Structure関連の話はこの本で初めて目にしました。

他にも漸近的平坦性、スピノル、量子重力(の入り)等が書いてあって、宝の山みたいに感じました。

あと他にも小玉佐藤の一般相対論

一般相対性理論【現代物理学叢書】 (岩波オンデマンドブックス)

一般相対性理論【現代物理学叢書】 (岩波オンデマンドブックス)

は数学的に完璧にやりたい!って人向けです。

初学者が読むと詰みます。それぐらい数学的にしっかり相対論を説明している日本語ではかなり珍しい?本だと思います。

困ったことがあるとたいていWaldかこの本を参考にしています。ビアンキモデルがちゃんと説明されている和書はこれぐらいなんではないでしょうか(もちろん憶測です)

そして、このブログの最初の方でも出てきたHawking&Ellisです。

The Large Scale Structure of Space-Time (Cambridge Monographs on Mathematical Physics)

The Large Scale Structure of Space-Time (Cambridge Monographs on Mathematical Physics)

これは相対論やってみようかな~ぐらいの気持ちで読むと間違いなく死ぬマニア向けの本です。(と指導教員や先輩にも言われた)

読むなら相当覚悟をもって挑むか、WaldのCausal Structureの参考にするといいと思います。(僕は完全に後者です)

あと数学は何で勉強しましたか?とも訊かれますが、僕はほとんどこれ一冊です。

Geometry, Topology and Physics, Second Edition (Graduate Student Series in Physics)

Geometry, Topology and Physics, Second Edition (Graduate Student Series in Physics)

これで足りないことが出てくればその都度他の数学書を漁ってみるって感じでした。

この本は相対論に限らず物理に応用する数学全般を扱っているので、物理系の誰にでもオススメできます。



と、これがだいたい僕の軌跡ですが、最初に言うのを忘れてました。

僕は一冊の本を最初から最後まで読み切る!!!

みたいなことをほとんどしたことがありません。

お行儀が悪いので、面白そうなトピックをつまみ食いしたり、つまらなそうなとこは飛ばしたりします。

勿論教科書というのは往々にして最初から順番に読んで理解していくように作られているものなので、よくあれここわからん、前に戻らなきゃ・・・てのを何回も繰り返したりします。

不真面目な僕には1から順番にコツコツやっていくという方法はゼミで輪読でもしない限りできません。つまり、行き当たりばったりです笑。

多分勉強法としては愚策なのでできる人はコツコツやった方がいいと思います。


あと教科書というより論文を結構読んでいました。

最新の研究のものではなく、当時のものです。

古いものになるとarXivにないことが多いので、そこは大学の研究室に感謝です。

上で紹介した本に詳しく載っていない内容としてPetrov分類やNewman Penrose技法等があり、この辺りが詳しく載っている本としては

The Mathematical Theory of Black Holes (Oxford Classic Texts in the Physical Sciences)

The Mathematical Theory of Black Holes (Oxford Classic Texts in the Physical Sciences)

があります。

あのチャンドラセカールの書いた本で、タイトル通りブラックホールに関しての内容のほとんどをカバーしています。

そしてめまいがするほど計算が詳しい!こんなに計算が詳しい本は世界でもこの本だけじゃないでしょうか。

あとは今だとSGCシリーズという日本語の院生向けの参考書シリーズも出ているので、それを結構読んでいることも多いです。



あ、ちなみにこの道の人が必ず通ると言われるランダウの場古典ですが、参考程度にしか読んだことがありません笑