院生と物理学と+α

大学院生(専攻は相対論と量子情報)が学んだこととかつらつら書いていきます

2018-01-01から1年間の記事一覧

代表的な4次元ブラックホールについて

遂に4月になってしまいましたね・・・雪の舞う季節に入院して気づいたら桜が咲き始めてました。前回からだいぶ時間があいてしまいましたが、せっかく新学期になったので更新しようと思います。ブラックホールを用いたタイムマシンの話でしたが、やはりブラック…

ブラックホールを用いたタイムマシンについて(その1)

古今東西SFものの定番であるタイムマシンについて数回にわけて少し真面目に解説?します。 今回はとりあえず紹介で、次回以降数式でちゃんと追っていこうと思います。 学部生でも十分追えるというか擬リーマン幾何をある程度知っていれば読めると思います。…

相対論を学ぶ為の教科書参考書

相対論を学ぶのにどんな本を読んだらいいか? と訊かれたので、それについてちょっとまとめようと思います。 結論から言いますが、そんなの知りません。 何故なら僕は相対論を完全にマスターしたわけでもその道の一流の研究者でもないからです。 ですので、…

極限点、極限曲線

前回大域的双曲性についての定理をひとつ証明しようかと思いますと言いましたが、その前に特異点定理の証明で後々必要となる極限点と極限曲線について書こうと思います。 今までもそうですが、今回は証明がかなり数学チックなので辛いです(僕自身が)[定義:…

大域的双曲性(global hyperbolicity)

前回の続きで今回は相対論の概念の中でも特に重要な大域的双曲性について書きたいと思います。 ただその為に新たに導入しなければならない言葉が滅茶苦茶多いので、今回も定義ばかりでつまらないかもしれません。 まず依存領域(domain of dependence)を定義…

Lorentz多様体における距離

今回はこれから必要となる概念の定義ばっかりで正直あんまり面白くないです。Lorentz多様体は擬Riemann多様体なので、距離関数も通常の正定値計量のRiemann幾何のものとは異なります。 まず区分的に滑らかな因果的曲線$\gamma(t)$の区間$t\in[a,t]$の弧長$L(…

特異点定理に向けての補題

ちょっと持病の治療の為に長期入院することになってしまい、とてつもなく暇になってしまったので、今日から特異点定理の証明で重要となる命題を少しずつですが証明していこうと思います。 まずは未来集合に関する次の命題です。 [命題] $S$を任意の未来集合…